| 調査は、2019年8月26日と2020年8月21日に北海道利尻島沖合約10kmの人工魚礁(水深90m)の周辺海域にて採泥を行った。2019年は魚礁区1測点(A2)と対照区1測点(A6)で採泥した堆積物について、直接検鏡法により珪藻類休眠期細胞及び羽状類珪藻の同定・計数を行った。羽状類珪藻は光合成色素を確認して計数した。2020年は魚礁区(A2)で採泥した堆積物から浮遊珪藻Chaetoceros diademaの休眠期細胞及び底生珪藻Nitzschia sp.を単離し、培養株を確立した後、IMK培地(Na2SiO3添加)により温度3条件(5・10・20℃、光量50μmol m-2 s-1、明暗周期12時間)で培養実験を行った。底生珪藻Nitzschia sp.については光量2条件(1・50μmol m-2 s-1、明暗周期12時間、温度20℃)で培養実験を行い、低光量環境下での増殖特性の評価も行った。
2019年に採泥した堆積物では、魚礁区(A2)でChaetoceros spp.が最も優占し、対照区(A6)でThalassiosira spp.と羽状類珪藻が優占していた事が明らかとなった。珪藻類休眠期細胞及び羽状類珪藻ともに細胞密度が魚礁区(A2)で対照区(A6)よりも高かった事から、人工魚礁が珪藻類休眠期細胞と底生珪藻を集積させる効果がある事が示唆された。
2020年に魚礁区(A2)で採泥した堆積物から培養株を確立した浮遊珪藻C. diademaと底生珪藻Nitzschia sp.の培養実験の結果、C. diademaは10℃及び20℃の実験区で増殖が認められた一方で、Nitzschia sp.は低水温区(5℃)や低光量区(1µmol m-2 s-1)を含む全ての培養条件下において一定以上の増殖が認められた。 |