近年,大河川に合流する支川において越水氾濫等が多発している.本川の整備・強化は進んでいるため従来よりも高い水位に耐えることができるようになっている.その一方で,支川の整備は必ずしも十分とは言えず,本川の高水位がバックウォーターとなり支川の水位を上昇させることで,合流点や支川部での氾濫を引き起こしていると推察される.そのため,支川が潜在的に有するリスクは上昇していると言える.したがって,本川の水位変動に起因する支川での水位上昇量を算定することは防
災の観点から喫緊の課題である.
他方で,出水時の水位は小規模河床波の発達状況に影響を受けることが従来知られている.本川の水位によって支川における小規模河床波の形成・消失状況が異なり,それが支川の水位縦断形状に影響する可能性があるものの,そのような本川の水位変動に起因する支川の小規模河床波の発達状況やそれに伴う水位上昇については十分に検討されていない.
本研究では下流端水位を合流点での水位とみなして,下流端水位に応じた小規模河床波の発達状況やその影響で起こり得る水位縦断形状の特性を把握することを目的とする.水理量に応じて小規模河床波の抵抗則より算定した粗度係数を用い,1次元不等流計算において水位の値が収束するまで繰り返し計算し,水位縦断形状を求めた.加えて,河床波の影響が最も大きく現れる位置やその時の水位上昇率が下流端水位に応じてどのように異なるのか等の特性を検討した.最後に,背水区間を再現した水理実験と比較し,本計算手法の妥当性を検討した.
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