北海道に広く分布する泥炭性軟弱地盤上には交通量の多少に拘わらず数多くの道路盛土が構築され,供用および維持管理が行われている.泥炭は粘土と比較して非排水せん断強さは著しく小さく圧縮性が高いため,載荷重工法,圧密促進工法,固結工法などによる地盤改良後に盛土を構築する場合が多い.泥炭に圧密促進工法を施した上に液状化しやすい盛土材を用いた際,盛土は泥炭深く沈埋して盛土内水位が形成,すなわち,飽和盛土部の範囲が多い状態となる.このような状態で大規模な地震動が作用すると盛土自身が液状化して大崩壊に至る.仮に交通量が多い高規格道路の盛土で大崩壊が生じれば,救急救命活動や災害復旧に時間を要して経済活動に損害をもたらす恐れがある.このため,泥炭に沈埋した飽和盛土部の範囲を高規格道路全体で定性的に把握することは,予防保全の観点,維持管理への限定された予算の観点からも極めて重要であり,効率的な道路維持に資するものと考えられる.
本稿は泥炭に沈埋した盛土内水位および盛土底部(サンドマット)と泥炭の境界を二つの異なる物理探査手法(表面波探査,電気探査)で把握することを主目的として,従来の地盤評価手法であるボーリング,標準貫入試験,PS検層および電気検層の結果と比較,評価した結果である.
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