北海道のような積雪寒冷地の切土のり面は,冬期間の凍上現象やその後の融解期の表層部の泥ねい化や融雪水の流下,ならびに地下水の滲出等の影響を受けて崩壊する事例が多く確認されている.
その対策として,のり面の湧水処理を目的としたのり面被覆用の特殊ふとんかご(一般的なサイズは幅1.0m×長さ2.0m×高さ0.25mで,鉄線で編まれた直方体内に粗粒材が中詰材として詰められているもの)を敷設している例が数多くあり,北海道においては崩壊後の応急対策として使用頻度は高い.しかし,粗粒材を中詰材とする厚さ25cmの構造では,礫材の熱伝導率が比較的大きいことから,寒気による背面地山への凍結面の進入を防止することはできないため,凍上性が高い背面土の場合には凍結融解の影響により,特殊ふとんかごが波打つような変状が発生することがある.
そこで,特殊ふとんかごを用いた凍上・凍結融解対策工を恒久的に維持可能とすることを目的に,断熱特殊ふとんかご工法が考案され,効果が確認されてきている.その結果を踏まえ,断熱による切土のり面の凍上・凍結融解対策に着目し,現在検討を行っている.本稿では,断熱特殊ふとんかごによる切土のり面の凍上・凍結抑制効果の検証を目的とした試験結果および現地計測結果を踏まえた熱伝導解析結果について述べる.
|