シラン系表面含浸材は、コンクリート表面ならびに表層を疎水化させて、コンクリート内部への水や塩化物イオンの侵入を抑える浸透性の保護材料である。現在、コンクリート構造物の劣化対策として広く使用されている。シラン系表面含浸材は常温下での塗布が望ましいが、橋梁工事の出水期の回避など工期の制約により、冬期に行われることもある。冬期のコンクリート表面は温度が低く、川霧や結露で濡れやすい傾向にある。シラン系表面含浸材は、主成分が加水分解してコンクリート表面や空隙壁面の水酸基と化学的に結合することで、吸水抑制機能を発揮する。そのため、コンクリートに水分が多く含まれていると、塗布後、早期に加水分解し、表面近傍に大半の主成分が固着し、主成分が深く含浸せず、十分な厚さの吸水防止層が形成されにくくなる。著者は「厳しい環境下でのシラン系表面含浸材の施工の留意点整理に向けて」と題した過年度のコラムにおいて、室内実験の結果をもとに、シラン系表面含浸材を深く含浸させるには、塗布前にコンクリートの水分を減少させることが大切であることを紹介した。本稿では、このことを現場で確認するため、冬期に道路橋のコンクリート主桁下面で実施した検証結果について紹介する。
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