| 平成28年8月末に日本列島に上陸した台風第10号は,非常に強い風と大雨をもたらし,日高山脈北部日勝峠における山地部道路付近では多数の土石流および谷埋め盛土の崩壊が発生した.特に,KP159.0(日勝峠7合目付近)の盛土区間では延長約100 mにわたり,のり面が崩落した.崩壊盛土と交差する渓流4における被災後の道路横断管吞口は排水機能を維持していたことが確認されており,表面水は適切に排水されていたことがうかがえる.一方で,被災した盛土周辺の渓流では土石流が発生しており,土石流による吞口の閉塞と排水機能を失った渓流からの道路への溢流水が盛土の崩壊に影響を与えたことが予想される.
土石流と盛土の崩壊との関連性を議論するためには,道路と交差する渓流で発生した土石流と道路に流出した表面水を精緻にモデル化し,再現実験を行うことが有効である.また,土石流の精緻なモデル化は,土砂流出量の正確な見積もりにつながり,道路管理者による対策工選定においても有用な知見となると期待される.そこで本報告では,日勝峠においてiRIC(International River Interface Cooperative)ソフトウェアMoroho2DHソルバを用いて作成した土石流モデルを解析し,両渓流の堆積土砂量と土砂の到達時間を算出し,崩壊箇所③の盛土のり面崩壊への影響について検討した. |