| 農業用管水路は，内水圧を利用して農業用水を農地まで送配水する埋設を基本とした水路システムである．このような管水路が地震動を受けると管内水圧が急激に変動する地震時動水圧が発生するとされおり，既設の農業用管水路における地震時動水圧の観測が確認されている．農業用管水路の地震被害では，曲管部の継ぎ手の離脱や付帯施設の空気弁の破損といったことが想定される．これらの被害に対して地震動に伴う揺れが最も影響を及ぼしていると考えられるが，地震時動水圧による内水圧の急激な上昇も寄与していると筆者らは推察している．管水路の地震被害は地盤や構造の観点だけでなく，地震時の管内の水理挙動の観点も踏まえることが必要であると考えられる．地震時動水圧については観測事例の少なさから，現時点の農業用管水路の地震対策に考慮さていないのが現状である．
想定される地震動に対して発生する地震時動水圧が管水路において示す挙動を把握し，地震対策を講じるために，数値シミュレーションを用いて時空間の水圧変動を推定することは有用と考えられる．本研究では，畑地灌漑用の管網配管の既設管水路において計測された地震時動水圧を対象に，数値シミュレーションによる現象の再現について，実測値と計算値の比較から試みる．
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