| 一般国道336号北海道大樹町の歴舟橋は、1972年に架設された橋長554mのPC桁橋である。1989~1990年に地覆と高欄の補修が行われたが、その後の橋梁点検で現状の防護柵に腐食、変形、欠損が確認され、現行基準との照合の結果、耐力不足と判定されたため、防護柵の取替えを行うこととなった。また、地覆コンクリートもひび割れ、剥離、鉄筋露出が確認されたため、あわせて打換えることとなった。今回の補修工事では既設の防護柵を撤去した後、既設の地覆コンクリートをハンドピックおよびウォータージェットで舗装面まで斫り取って撤去し、新たなコンクリートを打換えることとなっている。なお、寒冷地の地覆コンクリートは凍結融解と凍結防止剤の影響を受けやすいことから、北海道開発局道路設計要領では、シラン系表面含浸材の塗布による予防保全が推奨されており、本工事でも塗布を行う設計となっている。シラン系表面含浸材は、コンクリート表層を疎水化し、コンクリート内部への水や塩化物イオンの侵入を抑える浸透性の保護材料である。シラン系表面含浸材の成分は、主にアルコキシ基とアルキル基で構成される。シラン系表面含浸材がコンクリート表層に含浸すると、アルコキシ基が加水分解し、疎水性のアルキル基がコンクリートの表面や空隙壁面の水酸基と化学的に結合する。これにより、コンクリート表層に吸水防止層が形成される。施工は簡便であるが、コンクリートに水分が多く含まれていると加水分解が早期に発生し、大半の成分が表面近傍にとどまって固着するため深く含浸せず、十分な厚さの吸水防止層が形成されにくくなる。このため、塗布前にコンクリート表層を十分乾燥させる必要がある。本工事は、コンクリートの打設が初冬期で、打設後、気温が低く、結露が懸念される環境下でシラン系表面含浸材を塗布することとなった。このため、施工品質を確保するため、施工者が寒地土木研究所へ技術相談し、さらに独自の工夫も加えて施工を実施した。以下にその取組みを紹介する。 |