側溝余水吐はダム余水吐の一種で、わが国ではダムサイトの地形上多数の使用例があり、その設計計算の方法としては、Hinds氏または物部博士の方法が一般に用いられており、両者はややその解法を異にしているけれども大差はない。なかでもHinds氏の方法は、相当詳細に展開され、側溝内の流速νをν=αχnなるごとく設計する積分型公式と、側溝内の2断面の運動量の対比より一定の底勾配(もちろん曲線勾配でもよいが)を持つ側溝内の水面曲線を追跡する近似式による方法の2種類がある。この二式のうち積分型の方式は甚だ簡単で、複雑な余水吐の計算のなかでは、近似式による方法についで正確な結果をあたえるが、ここに相当重大な仮定があり、この公式による結果と近似式による結果との間に考慮されるべき関連がある。さらに従来、側溝余水吐内部の流れの性質は、側溝の水路底勾配が1/15あるいは1/30のような、定流開水路では射流となる急勾配であることから、当然側溝内の流れも射流であるというあやまった類推が一般に行なわれ、この仮定に立脚した解法も行われているのであるが、Hinds氏と物部博士の公式により流れの性質を検討すれば、そのような事態にはならないと考えられる。一定の底勾配を持つ側溝内の流れの性質について、現在後述の証明では直ちにこの事柄を明らかにすることはできないが、積分型の公式の場合については、実用的には十分ではないかと思う。 |