豊平峡ダムは札幌市街を貫流する豊平川の上流に建設されたアーチ式コンクリートダムで、洪水調節、上水道用水の供給及び発電を目的に昭和47年完成した。ダムサイトは支笏洞爺国立公園内に位置しており、豊かな自然と柱状節理の美しい渓谷が魅力で、特に紅葉の名勝として市民に親しまれ、毎年20万人が訪れる観光スポットになっている。当該ダムは完成後30年近くが経過しており、堤頂部の手摺りは老朽化し、また一部破損したため交換することとなった。既設の手摺りは重厚な構造にて利用者の安全管理には優れているが、子供や視線の低い人等は堤頂からの眺望が制限されてきた。そこで、新たな堤頂手摺りの設計に当たってはユニバーサル・デザインの考え方を取り入れ、だれもが安心と安全をおびやかされる心配がなく、同時に自然体で景観を楽しむことが出来るよう設計上の配慮を行うこととした。本報告は、堤頂下流側手摺の大部分の改修が済んだことを機に、設計時において考慮した事項について、特にユニバーサル・デザインの原則や指針との関わりについて詳らかにした。そして、紅葉狩りに訪れた観光客の挙動について現地調査を実施し、設計時に想定した利用方法と実際の利用方法との差異について検証した。 |